KBS歌謡TOP10を短波ラジオで聴いていた頃
今日から新しい時代「令和」が始まった。
暮らしの中で、日本人がこれほど時代の変化を感じたのは初めてではないか?
自分が初めて韓国カルチャーに触れたのは昭和の時代で、もちろんインターネットもない頃だった。同時代を生きる異国の人たちは、どんな音楽を聴き、どんな映画を観て、どんな本を読むのだろう?という素朴な好奇心からだった。そしていつの日か、話をする時に、音楽や映画の話を一緒に出来たら楽しいだろうと思った。
K-POPという言葉もない頃、音楽の情報源は唯一ラジオだった。
短波で聴けるKBSの日本語放送の中で、「歌謡TOP10」という番組があり、それが韓国歌謡の最新ランキングを知る唯一の手段だった。当時はまだラジカセ文化の名残りで、短波が聴けるごっついラジオがわりと家庭にあった時代だった。そこでKBSの海外向け放送から聴こえてくる最新ヒット曲を毎週楽しみに聴いていたのが、韓国歌謡に触れた最初の体験だったと記憶している。
記憶が曖昧な部分もあって、聴き始めの頃と、熱心に聴いていた時と、多少のタイムラグがあるのだが、よく記憶している曲を思い出してみる。
まずは衝撃的だったのが、丁秀羅の「ああ!大韓民国」これは健全歌謡という規制を逆手に取ってPOP調の楽しい曲にしてしまった斬新な曲。
当時は健全歌謡という規制があって、アルバムに必ず1曲はマジメな国民の愛唱歌みたいな曲が入っていた。ソンゴルメのロックのアルバムにも最後に健全歌謡が入っていて、ズッコケてしまうのだが、まだそういう時代だったのだ。
そんな中で、丁秀羅の「ああ!大韓民国」は衝撃的だった。健全歌謡をヒット曲にしてしまうのだから。1988年のソウルオリンピックへ向けて高揚していく国全体の活気が伝わってくる、ハツラツとした曲だった。
もう一人印象に残っているのは、大学歌謡祭から出てきた学生(?)李仙姫の「J에게」この曲もよく流れていた。大きなメガネも当時の流行だったような気がする。その後、李仙姫が韓国歌謡界でこれほどビッグな存在になるとは思わなかったが、並外れた歌唱力は学生とは思えない存在感だった。
そして凄く耳に残るフレーズで覚えているのが、나미の「 빙글빙글」この曲もラジオからよく聴こえてきたノリの良い曲。
もう一人、大スターがいた!
전영록 「아직도 어두운 밤인거봐」これはカッコ良かった。この曲が収録されたアルバムはLPで持っていたはず。カセットテープではなく、わざわざレコードを購入したのだ。21世紀になってから、전영록の娘さん、전보람がT-ARAのメンバーとして活躍するんだから、時代の流れを感じるのも当然か。
こうして見ても、80年代の中盤の韓国歌謡はPOP調の曲も流行ってきて、音楽を巡る時代の変化が確実に表面化してきた時期だったことがわかる。
今、こうしてYoutubeで当時の映像や音楽を振り返り再現できるのも凄いことだな。KBS歌謡TOP10を短波ラジオで聴いていた頃の記憶を振り返ることができるのも現代のIT技術のおかげなんだなぁと、令和の始めの日に考えてみた。