また巡り会えた世界 / 다시 만난 세계

K-POP、小説、ドラマ、映画、韓国カルチャーわったりかったり

梨泰院クラスと梨泰院クラブ

このブログでは韓国カルチャーを語ると言っておきながら、K-POPばかりになってしまっているので、これからは映画やドラマや文学についても語っていこうと思う。

 

久しぶりに韓国ドラマを観た。今流行りのNetflixで、今話題の「梨泰院クラス」を観た。見事にハマってしまい、気がつくと一気に観てしまった。最新の韓国ドラマということで、現代の韓国社会や若者の今の姿がわかると思って見始めたのだが、確かに今っぽくてめちゃくちゃおもしろかった。

 

何と言っても、チョ・イソのキャラクター、キム・ダミという若い女優の演技力、表現力が圧倒的に良かった。こんな凄い若い逸材が出て来るところが韓国映画/ドラマの潜在力の高さだろう。学力、IQ、運動、自己主張、なんでも得意でSNSを駆使して何十万人のフォロワーを持つというチョ・イソというキャラクターを、個性的な演技力と眼力のある表情で、巧みに創り上げている。鋼鉄の意志を持つ主人公のパク・セロイだって最後には振り向かせてしまうんだから。

 

チョ・イソが登場して、タンバムで働きはじめるあたりは正に痛快そのもの。登場人物の中でも際立ってカッコ良くて、それでいてかわいらしさも持っている。これは女性も憧れるし、今っぽいある種のガールクラッシュともいえる。チョ・イソの痛快な姿を観ていて頭に浮かんだのは、Rocket Punchの「BOUNCY」だ。最初っから最後までもう全開の全速力で駆け抜けるイメージ。チョ・イソのBGMには「BOUNCY」が良く似合う。

 

SNSが重要な役割を果たしたり、折りたたみ液晶の最新スマホが出てきたり、梨泰院でのハロウィンの喧噪が登場したり、現代の韓国のカルチャーを垣間見ることができる。

 

一方で、このドラマで描かれるのは、格差社会、財閥や権力者の横暴、理不尽な社会、大人から抑圧される若者たち、リベンジ、外国人差別トランスジェンダーへの偏見、親子関係、等々、以前から韓国社会が持つ問題点でもあり、古典的で普遍的なモチーフであるともいえる。登場人物は曲者ばかりで個性的だが、皆どこか影があり、屈折した悲しみや過去を持ち、恋愛もなかなか思うように成就しない。この切なさとやり切れない気持ちが、ついつい感情移入してハマってしまうんだろうな。現代社会の問題点も巧みに織りまぜていて、実に良く出来ている。

 

梨泰院という街は、古くから米軍基地の近くで外国人が多く、ソウルの中でも特異な発展を遂げた繁華街だった。1980年代に初めて訪韓した時から、梨泰院には何度も足を運んだが、今も昔も外国と若者カルチャーが交差する、ちょっとダークなカッコいい街であることがわかる。ハミルトンホテルも当時から変わらず今も存在していた。梨泰院の裏通りには偽物のバッグやファッション、革製品のショップが並んでいて、英語と日本語がそこら中にあふれていて、なんともカオスな空間にワクワクしたものだ。

 

梨泰院と弘大が現代のクラブカルチャーの中心地となっているらしい。2020年春に世界を襲った新型コロナウイルスの流行からいち早く脱した韓国。以前の生活を取り戻した矢先に、梨泰院のクラブからクラスターが発生して、一瞬で大量の感染者が出た。梨泰院のクラブ、それもトランスジェンダーのクラブから発生したというニュースが再び韓国に衝撃を与えた。K-POPスターや芸能人もこの時期に梨泰院のクラブに出入りしていたことも判明し、ちょっとした騒動になってしまった。梨泰院クラスを観たら、なんとなく梨泰院に行きたくなってしまうだろう。ドラマが梨泰院の集客に貢献したという側面があるのも事実だろう。梨泰院クラスが流行っている正にその時に、梨泰院クラブがコロナで話題になってしまったのは何とも皮肉なことだった。